九大原子核セミナー

九州大学の原子核理論と原子核実験の共同開催のセミナー

第935回九大原子核セミナー

2017年3月1日(水) 16:30〜18:00

講師:渡邉 慎 氏 (理化学研究所)

演題:変形ハロー核の動的性質と静的性質

場所:ウェスト1号館7階 物理セミナー室2 (W1-A-722室)

概要:
中性子ハロー核とは、コア核に数個の中性子が極端に薄く広がった構造を持つ原子核のことである。11Liや11Beはその典型例であり、現在では、31Ne(30Ne + n)や37Mg(36Mg + n)まで実験的にハロー核として確認されている。このように新たに発見された重いハロー核は、いわゆるisland of inversionの物理とも関連しており、そのコア核(30Neや36Mg)は大きく変形していることが予想されている。このようなハロー核は「変形ハロー」と呼ばれ、ハロー核の新たな存在形態として注目を集めている。変形ハロー核内では、コア核が変形に伴う回転励起(コア励起をしており、その結果、様々な1中性子状態の重ね合わせとして基底状態が形成される。これはコア励起がハロー核の構造にもたらす静的効果といえる。一方で核反応を考えた場合、コア核は散乱過程で励起・脱励起を繰り返すことになる。これは、コア励起が核反応に与える動的効果といえる。これまでの反応理論ではコア励起を無視した計算が主流であったため、標的核が中性子を叩くことで分解を引き起こすという機構のみが陽に扱われていたが、現実的には、標的核がコア核を内部励起させることによる分解機構も存在する。原子核が重くなる程コア励起の自由度は重要になるため、これらの分解機構の競合を統一的に記述するための理論的整備が必要不可欠である。

このような背景を踏まえ、本研究では変形ハロー核の構造と反応を統一的に記述する理論の構築を目指す。核構造模型として粒子・回転子模型 (Particle Rotor Model: PRM)を用い、その後、歪曲波ボルン近似 (Distorted Wave Born Approximation: DWBA)を用いることでコア励起の静的効果と動的効果を明確に評価する。本発表では、できる限り初歩的な量子力学の知識を用いて、ハロー核をどのよに見てきたかについての個人的見解を述べ、その後、研究の進展及び展望を述べる。

q935.pdf
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