九大原子核セミナー

九州大学の原子核理論と原子核実験の共同開催のセミナー

第916回九大原子核セミナー

2014年3月3日(水) 16:00

講師: 関澤 一之 (筑波大学)

演題:TDHF計算による多核子移行反応の研究

場所:理学部 物理大学院講義室(理学部2号館2階2263室)

概要:
Coulomb障壁近傍の入射エネルギーにおける原子核衝突では、核融合反応が起こる衝突径数領域の僅かに外側の領域において多核子移行反応が起こり得る。多核子移行反応は、衝突する2つの原子核の構造の性質と時間に依存した動的な性質の双方を反映した非平衡量子輸送過程と捉えることができ、我々は内在する物理に興味を持っている。近年では、多核子移行反応は、他の方法で生成することが困難な不安定核の生成手段としても興味を持たれている[1,2]。多核子移行反応の微視的反応機構を明らかにすると共に、目的の原子核を生成するための最適な条件(入射核、標的核、入射エネルギー)を予言するためには、パラメータや仮定のなるべく少ない微視的理論によって反応を記述することが望ましい。そこで我々は、重イオン衝突を核子自由度から微視的に記述することが可能である時間依存Hartree-Fock(TDHF)法を用い、多核子移行反応の研究を進めてきた。我々は、近年提案された粒子数射影法[3]を用いて反応確率と断面積を求め、実験値と比較することにより、TDHF計算によって多核子移行反応が定量的に記述できるということを明らかにした[4]。

本セミナーでは、これまでに行った多核子移行反応のTDHF計算の詳細を紹介する。また、最近行っている、粒子数射影法を拡張した解析による核子蒸発の効果の見積もりやTHDF計算によって記述される移行反応機構の解析の現状を報告したい。

[1] S.C. Jeong et al., KEK Rep. 2010-2 (2010).
[2] V.I. Zagrebaev and W. Greiner, Phys. Rev. C. 87, 034608 (2013).
[3] C. Simenel, Phys. Rev. Lett. 105, 192701 (2010).
[4] K. Sekizawa and K. Yabana, Phys. Rev. C 88, 014614 (2013).

q916.pdf
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