九大原子核セミナー

九州大学の原子核理論と原子核実験の共同開催のセミナー

第856回九大原子核セミナー

2009年5月1日(金) 16:30

講師:野呂 哲夫氏 (九州大学)
演題:九大タンデム加速器質量分析系開発と、軽イオン核物理研究の現状

概要 :

粒子物理学のAMSサブグループと軽イオンサブグループの最近の活動について報告する。
AMSグループでは、タンデム加速器を用いた14C年代測定の実用化を目指して開発を行なって来たが、最近になって、ようやく自信の持てるデータが取得できるに至った。大気中核爆発実験の名残(bomb効果)を積極的に利用した、現代種子の年代測定を具体的テーマとして設定、福岡で採取された種子についての年代較正曲線を得るための測定を行なっている。セミナーでは、データ精度向上のキーとなった最近の開発結果についても紹介する。
軽イオングループでは、スピンアイソスピン自由度を制御して原子核の応答を調べ、そこから核内相関などを調べる研究と、自由空間での核子-核子散乱と核内での核子-核子散乱とを直接比べることにより原子核の媒質効果を調べる研究とがなされている。前者では、偏極情報を駆使してスピン双極子励起を抽出し、テンソル効果の強さを抽出する試みが進行中であり、後者ではこれまでの(p,2p)反応に加えて(p,pn)反応の結果が出だした。これらについて、また、後者に関連し不安定核領域の核構造研究に向けた、(p,2p),(p,pn)反応の分光学的手段としての検討について紹介する。
時間があれば、伊都キャンパスで進行中の新加速器施設についても紹介したい。856.pdf
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第855回九大原子核セミナー

2009年4月24日(金) 16:30

講師:八尋 正信氏 (九州大学)
演題:クォーク系、核子系に対する有効理論-RIBF,J-PARCの物理へ向けて-

概要 :

最初に、簡単に研究室の研究体制について述べる。クォーク多体系および核子多体系を理解する上で最も有効な方法が有効理論である。クォーク多体系の有効理論として、最近注目されているのが、Polyakov-loop exteneded Nambu Jona-Lasinio (PNJL)模型である。この模型を使った九大グループの最近の仕事を紹介する。次に、核子多体系として、不安定核反応を取り上げる。九大グループでは、Glauberを拡張した新しい理論を提案した。この理論の紹介をする。最後に、RIBF,J-PARCの物理について展望する。855.pdf
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第854回九大原子核セミナー

2009年4月17日(金) 16:30

講師:相良 建至氏 (九州大学)
演題:3核子系の謎解明と天体C+α反応速度測定の現状

概要 :

3核子系の研究には2つの課題、短距離3核子力の探索と低エネルギー3核子反応の謎解明、が残っている。1957年に藤田-宮沢論文でππ3核子力が指摘されて以来、多くの理論・実験を経て、1998年にその強さが決定された。九大タンデムでの実験もこのππ核子力決定に寄与した。次は、より重い中間子を交換する短距離型のπρ3核子力やρρ3核子力の強さ決定である。九大グループはこれら短距離型3核子力の証拠を探して、RCNPでpd capture、pd breakupの実験を続けている。
 一方で、3核子力では説明できないAy puzzleやspace star anomalyという謎の現象が10MeV 近傍にある。Ay puzzleの原因はヒントが得られているが、space star anomalyは全く原因不明である。今九大では、space star anomalyの特徴を知るための系統的実験を行っている。特徴から何らかのヒントを得たい。

 天体C+α反応(Ecm=0.3MeV)速度測定は、40年に及ぶ世界的競争であり、九大でも15年前から実験準備をしてきたが、未だゴールに達していない。それほどの難実験である。
 12C+α→16O+γの0.3MeVでの断面積(〜1pbarn)を測るには、逆反応ではなく順反応の実験で、γでなく荷電粒子の16Oを検出する、しかない。九大とドイツRolfsのグループだけがこの方法を採っている。九大では科研費SでEcm=2.4MeVでの測定に成功して以来、なかなか低エネルギーに進んで行っていない。技術的問題よりも実験チーム事情が大きい。今年8月にパーマネント(5年+5年)の助教が加入するので、一気に実験進行を加速させたい。計画では、あと3年間でEcm=0.7MeVまでの測定を終え、その後0.7MeV→0.3MeVへ実験データを外挿する。この外挿では核理論の方々のご協力をお願いしたい。854.pdf
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