九大原子核セミナー

九州大学の原子核理論と原子核実験の共同開催のセミナー

第919回九大原子核セミナー

2014年7月4日(金) 16:30

講師: 小野 勝臣 (九州大学)

演題:天体現象から探る中性子星の内部構造

場所:理学部 物理大学院講義室(理学部2号館2階2263室)

概要:
 太陽のおよそ8倍より重い恒星は、その進化の最終段階で重力崩壊を起こし、超新星爆発に至ると考えられている。超新星爆発のメカニズムはまだ解明されておらず、天体物理学の中でも特に大きな問題の一つである。現在のところ、超新星爆発の後、中心に残る原始中性子星から放出されるニュートリノによる再加熱が有力であるが、詳細な物理過程を考慮した一次元球対称の数値計算では爆発を再現できないことが知られており、多次元効果の重要性が認識されつつある。まず超新星爆発計算の現状を紹介したい。
 他方、重力崩壊及び超新星爆発の後に中心に形成される中性子星は、その中心密度が核密度を越える極限状態が実現していると考えられており、天体物理学のみならず、核物理のフロンティアともなっている。しかし、中性子星はQCD相図において低温高密度領域に位置しており、実験及び格子QCD計算が適用できない。理論的には、球対称、完全流体及び静水圧平衡という仮定の下、シュバルツシルト計量をアインシュタイン方程式に適用することで、いわゆるTOV方程式が得られる。これから、中性子星の最も基本的な物理量である質量と半径の関係が得られる。しかしながら、この方程式を閉じるためには、中性子星内部の構成物質を反映した状態方程式が必要である。逆に言えば、もし天体現象から質量と半径の関係が分かれば、中性子星の状態方程式に制限を加えることができる。そこで、天体現象から中性子星内部を探る方法について理論とそれを検証する観測の紹介を行う。中性子星内部の一部では、核子の超流動状態、パイ中間子及びK中間子の凝縮、閉じ込めから解放されたクォーク及びクォーク対生成によるカラー超伝導状態、ハイペロンの存在の可能性が指摘されており、特にクォークや中間子凝縮の存在はニュートリノの放出率を増大させると予想されている。ニュートリノの放出は中性子星の熱的進化に大きな影響を与えるため、観測から得られる中性子星の温度進化から、構成物質に示唆が与えられる。そこで、中性子星の冷却計算と中性子星の表面温度の観測を紹介する。また中性子星が関連するその他の天体現象として、X線バーストを例にとり、天体現象から中性子星内部の情報を引き出す方法についても紹介したい。

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第918回九大原子核セミナー

2014年6月13日(金) 16:30

講師: 田上 真伍 (九州大学)

演題:原子核における四面体変形

場所:理学部 物理大学院講義室(理学部2号館2階2263室)

概要:
 近年の平均場理論の計算により、原子核でこれまであまり調べられていない新たな変形の存在が予想されている。それらはエキゾチック変形と呼ばれ、その一つに四面体変形がある。四面体変形した状態は特定の陽子数または中性子数の原子核で特に安定となる。これらの特定の粒子数は四面体変形の変形魔法数であり、陽子数と中性子数がともに変形魔法数である原子核を四面体変形の閉殻核と呼ぶ。
 我々は微視的な理論手法の一つである量子数射影法を用いて、四面体変形した原子核の研究を行ってきた。量子数射影法は平均場近似で破れた対称性を回復させる手法であり、平均場近似においてはエネルギー的に縮退した異なる変形の向きの状態を重ねあわせることで、対称性の回復した状態すなわち量子数の良い状態を求める方法である。量子数射影法では系のハミルトニアンが与えられれば一意的にエネルギースペクトルを求めることが出来る。
 これまでに我々は、四面体変形した閉殻核とそれに粒子の一つついた奇核のスペクトルの計算を行っている。このようなスペクトルを解釈する際に離散的な回転とパリティ反転の群論である点群が大いに役立つ。講演では、点群の基本的な内容に触れた後、量子数射影法で求めたエネルギースペクトルを示す。また、平均場計算と量子数射影法で用いる相互作用に現実的なGogny相互作用を用いた結果についても述べる。

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