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原子核反応 Nuclear Reaction

原子核反応について簡単に説明します。

原子核反応
原子核反応(略して核反応)とは、入射粒子が標的核と衝突して起こる一連の過程の総称です。


通常、核反応は1つの入射粒子aが1つの標的核Aに衝突して起こります (星の中の核反応では、2つの入射粒子が同時に標的核に衝突する反応が重要な場合がある)。 その結果、原子核Bを残留核として、いくつかの放出粒子b, cなどが放出されます(上図)。 入射粒子aおよび標的核Aに対して、放出粒子b, c, ...および残留核Bの組み合わせに対応する様々な種類の反応現象が起こります。

核反応は、入射粒子、標的核、放出粒子、残留核それぞれの種類、状態、入射粒子の入射エネルギーなど様々な要因によって特徴付けられています。 それらの要因に対する反応の機構を明らかにし、衝突の際に働く相互作用、核の励起準位やその性質を究明することが原子核反応論の目的です。

原子核反応を、反応の最終段階における粒子の組み合わせによって分類したものを下の図に示します。

ここで、図中のaを入射粒子、Aを標的核としており、 左から、弾性散乱、非弾性散乱、移行反応、…、複合核反応を表しています。 最も基本的な過程である弾性散乱では、粒子の種類や内部状態は変化しません。
弾性散乱よりも複雑な反応として、入射粒子および標的核のいずれか(あるいは両方)が励起される非弾性散乱、 粒子の組み換えを伴う交換反応および移行反応などが挙げられます(その種類は多く、これらの反応を特徴付ける反応のメカニズムもまた多様です)。 これらの反応では、反応に直接関与する自由度(核子の数)が少なく、反応現象をかなり良く記述することができる模型が構築されています。

これまでに説明した反応はまとめて直接反応と呼ばれています。反応粒子間距離が近づくに連れて、反応を起こす粒子の構成核子は多数回の衝突を起こすようになり、 反応に関与する粒子の数が増えてくるために、反応を良く記述することが困難になり、 最終的には、入射粒子と標的核が融合して複合核を形成するようになります。

入射粒子の持つエネルギーは複合核全体に散逸し、高励起状態の原子核が作られます。 散逸したエネルギーは、(直接反応と比較して)長時間かけて、中性子やγ線の放出によって解放されてゆき、 反応に関与する自由度は非常に大きくなるものの、統計的手法を適用することにより取扱うことができます。

以上、核子および核子の複合粒子としての原子核を入射粒子とした反応を記述する模型が構築されていることを述べましたが、入射粒子として用いられる粒子として、前述の粒子のみならず、π中間子、K中間子などのメソン、電子、ミューオンなどのレプトン、光子など、様々なものが考えられます。 これらの入射粒子に対しても、これまでに述べた反応計算の手法に準じた取り扱いによって反応を記述することができます。

また、核反応の研究は、それ自体有意義であるばかりでなく、多くの周辺分野にとって重要な意義を持っています。

天文学や宇宙論の分野において、核反応の研究は、宇宙の創生と進化、恒星中でのエネルギーの発生機構、現存の元素の合成機構などに対する核反応による寄与を定量的に決定する上で重要な情報を与えます。

また、工学の分野においては、原子力技術、放射性廃棄物の処理技術の基礎として不可欠であり、医学の分野においても、放射線治療など各所に原子核物理の知識が応用されています。

九州大学理論核物理研究室では、原子核の直接反応を記述する理論を駆使した原子核反応の研究が精力的に行われており、 特に近年注目を集めている中性子過剰核の反応研究に関しては、世界的な業績を挙げています。

具体的な研究手法

以下のような研究の手法によってこれまで多くの成果を挙げ、
かつ、これからも 多くの結果を残すと期待されるものです。

離散化チャネル結合法(CDCC)



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   Nuclear Theory Group, Department of Physics, Kyushu University