九大原子核セミナー

九州大学の原子核理論と原子核実験の共同開催のセミナー

第863回九大原子核セミナー

2009年11月4日(水) 16:30

講師: 緒方 一介 氏 (九州大学)
演題:12C生成反応の新しい理解


概要 :
 宇宙進化の過程において、生命の素材とも言うべき12C原子核がどのように生成されたのかを理解することは、我々人類にとって本質的な研究課題であると考えられる。
 これまで12Cの生成は、(1)2 つのα粒子(4He原子核) が8Be原子核(不安定) を形成し、(2)8Be原子核と第3のα粒子が12Cの励起状態(共鳴状態)を形成するという、連続して起きる2 つの2粒子反応という描像で理解されてきた。しかし、環境の温度が低い場合、3つのα粒子系のエネルギーは12Cの共鳴エネルギーに達することができないため、この描像は明らかに破綻する。その場合、必然的に、3つのα粒子が同時に反応し融合するという、新しい反応描像を採らなければならない。
 本研究では、上述の3粒子融合反応を量子力学的に定式化し、これを用いて12C生成反応率の再評価を行う[1]。講演では、特に

・これまでの標準的な12C生成反応率[2]と比較して、107K で26桁、108K で6桁もの劇的な増大が得られること。

・低温領域における3粒子の融合反応を記述する近似法として広く用いられている方法[3]が、極めて精度の低いものであること。

の2点に重きを置いて研究成果の報告を行う予定である。


[1] K. Ogata, M. Kan, and M. Kamimura, Prog. Theor. Phys. 122, 1055 (2009).

[2] C. Angulo et al., Nucl. Phys. A656, 3 (1999).
[3] K. Nomoto, Astrophys. J. 253, 798 (1982).
863.pdf
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